Quantcast
Channel: 精神科医の犯罪を問う
Viewing all articles
Browse latest Browse all 422

改正精神保健福祉法が成立しました

$
0
0
本日、衆議院本会議が開かれ、改正精神保健福祉法が成立しました。
 
本当に色々ありましたが、悪い話ばかりではありませんでした。問題となっていた「家族等いずれかの同意」に関しても、衆議院厚生労働委員会で「家族等のいずれかの同意による医療保護入院については、親権を行う者、成年後見人の権利が侵害されることのないよう、同意を得る優先順位等をガイドラインに明示し、厳正な運用を促すこと」とする附帯決議が出されました。
 
同意に優先順位が付けられない場合、医療保護入院が濫用されたり、混乱が起きたりする危険性がありました。これについては、当初からずっと議員も問題点を指摘してきました。問題は明らかであり、日本精神科病院協会すらもこれを指摘していましたが、ずっと政府は同じ答弁に終始し、最後まで態度をゆずりませんでした。そこに何らかの意図があるのは確実でしたが、何とか縛りを入れることができました。
 
その他にも、医療保護入院を巡って人権侵害が起きないよう精神科病院を指導徹底すること、強制入院を減少させるための検討することを政府に求めています。また、認知症高齢者が安易に精神科病院へ入院させられることのないように対策を求めたりもしています。
 
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
一 精神障害のある人の保健・医療・福祉施策は、他の者との平等を基礎とする障害者の権利に関する条約の理念に基づき、これを具現化する方向で講ぜられること。
二 精神科医療機関の施設基準や、精神病床における人員配置基準等については、精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針の内容を踏まえ、一般医療との整合性を図り、精神障害者が適切な医療を受けられるよう、各規定の見直しを検討すること。なお、指針の策定に当たっては、患者、家族等の意見を反映すること。
三 「家族等いずれかの同意」による医療保護入院については、親権を行う者、成年後見人の権利が侵害されることのないよう、同意を得る優先順位等をガイドラインに明示し、厳正な運用を促すこと。
四 精神障害者の意思決定への支援を強化する観点からも、自発的・非自発的入院を問わず、精神保健福祉士等専門的な多職種連携による支援を推進する施策を講ずること。また、代弁者制度の導入など実効性のある支援策について早急に検討を行い、精神障害者の権利擁護の推進を図ること。
五 非自発的入院の減少を図るため、「家族等いずれかの同意」要件も含め、国及び地方自治体の責任、精神保健指定医の判断等、幅広い観点から、速やかに検討を加えること。
六 精神疾患の患者の権利擁護を図る観点から、精神医療審査会の専門性及び独立性を高めることや精神医療審査会の決定に不服のある患者からの再度の請求への対応など機能強化及び体制の整備の在り方を検討し、必要な措置を講ずること。
七 非自発的入院の特性に鑑み、経済面も含め、家族等の負担が過大にならぬよう検討すること。
八 精神科病院の管理者に対し、医療保護入院について、可能な限り、患者の人権に十分配慮した入院、入院後の治療行為の患者本人への説明に加えて、速やかな退院の促進に努めることを指導徹底するとともに、医療保護入院等の患者の退院後における地域生活への移行を促進するため、相談対応や必要な情報の提供、アウトリーチ支援など、その受け皿や体制整備の充実を図ること。
九 認知症の人については、あくまでも住み慣れた地域で暮らし続けることを基本に置き、精神科病院への「社会的入院」の解消を目指すとともに、地域の支援・介護体制の強化に取り組むため、「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」の推進など医療福祉全般にわたる総合的な対策を講ずること。
十 認知症の人の本人意思を尊重する観点から、成年後見制度の改善・普及のほか、本人の意思や希望をできる限り早期に確認し、それを尊重したケアの提供を確保する取組を進めること。
 
ただし、附帯決議は法的拘束力がありません。これに実効性を持たせるためには、国民が監視し続け、政府がしっかりとこの理念に沿って運用していくことを常に確認していく必要があります。
 
改正法が成立しましたが、今後は法律に沿って具体的な政省令・通知・ガイドラインなどが作られていきます。厚生労働省の検討会も立ち上がります。ここからが勝負とも言えます。法改正による改善点は強化されるようにし、改悪点についてはそれを機能させないよう縛ることもできるでしょう。それは、我々の声がどれだけ大きいかにかかってきます。
 
そういう意味では、私としては非常に有り難い展開となりました。これからも強制入院の問題について国民の関心を引き続け、その運用について国民の監視の目を向けることができるからです。一番恐ろしいのは、誰にも気付かれないまま、ひっそりと犯罪や拷問、虐待、人権侵害が精神医療現場で続けられることです。誰も関心を持たなければ、やりたい放題になるのです。
 
今回、多くの議員たちが強制入院制度のみならず、精神科での治療の問題について知ることができました。これは非常に良い点です。こういう啓発の機会がなかったら、これから出てくることが予想される「早期に精神科につなげる」類の法案に対して、誰も何の危機感も抱かずに通してしまうことになったでしょう。
 
非常に抑圧的であった保護者制度(精神障害を持つ家族に治療を受けさせる義務が保護者に課せられ、しかも精神科医の命令に従わないといけないというもの)が廃止されたことも良い点です。
 
次は、厚生労働省に声を上げていきましょう。衆議院・参議院の附帯決議に沿って、絶対に不当な強制入院が起こらないように徹底することを求めましょう。
 
厚生労働省 精神・障害保健課 FAX:03-3593-2008
 
※もちろん、今回の結果について満足しているわけではありません。まだまだ力不足を痛感しています。もっとできたはず、と悔やむ点も多々あります。原点に戻り、精神科医の犯罪を表に出さない限り、根本から物事を変えることはできません。啓発と摘発、両方とも強化していきましょう。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 422

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>