最初は良いニュースから
皆様のおかげで、労働安全衛生法改正案が今国会中に可決される可能性がほぼなくなりました。これは本当に皆様のおかげです。
徹夜で資料を作り、連日国会に足を運び、また寝ないで資料を作って配布するという日々が続きました。体力には自信がありますが、さすがにぶっ倒れました。身体も心もつらい日々でしたが、励みになったのは皆様の後方支援です。どこの事務所に行っても、法案に反対する多数のFAXをいただいているという声が聞こえてきました。
議員は毎日毎日多くの業務をこなします。どんなに重要な問題であっても、議員がそこに注意を置かなければ認識すらされません。逆に言えば、しっかりと注意を引くことで、議員もしっかりこの問題を認識するのです。もちろん、どれだけ声を上げても、無視したり見ないふりをしたりする議員もいます。しかし、中には国民の声に耳を傾ける議員もいます。議員関係者の関心を高めることができたのは素晴らしいことです。
しかし、そんなことも一瞬で吹き飛ぶような出来事が起きました。28日午前に閣議決定された、自殺総合対策大綱です。
読めばわかりますが、これは日本の精神医療の基本計画そのものです。学校から職場まで、あらゆる場面で精神病の「早期発見」が進められ、精神科につなぐという計画です。恐ろしいまでに徹底されています。当然、その中には職場のメンタルヘルス対策の強化が盛り込まれています。つまり、今回の国会で通らなくても、廃案になったとしても、絶対法案を再度通してやるという意思表示なのです。
腹立たしいのは、自死遺族の声やパブリックコメントが完全に無視されていることです。全国自死遺族連絡会は、ヒアリングで貴重な意見を述べています。
腹立たしいのは、自死遺族の声やパブリックコメントが完全に無視されていることです。全国自死遺族連絡会は、ヒアリングで貴重な意見を述べています。
【自死対策への要望】
現行の精神科医療問題の改善・改革なしでは、防ぐことは不可能である。精神医療体制がこれまでのままでは、むしろ、自死に追いやる要因のひとつになっている可能性が非常に高い。
現在は「精神科医療に対する偏見が強く」「受診している例は少ない」という状況ではありません。むしろ、自死を防げない精神科医療に対する不信感が強まっているのです。それに対する精神科医療専門家の責任感のなさを、多くの遺族は憤っています。精神科医療専門家に対する遺族の怒りを「遺族の初期感情としての怒り」とみなしている専門家もいるようですが、筋違いです。「国民一人ひとりの気づきを自殺予防につなげていくこと」は、精神科医療専門家の責任逃れであると、多くの遺族は感じています。
【労働問題・学校教育・経済問題・社会福祉問題・等々、うつ的症状がでない様な抜本的対策】
【うつ病の早期発見と早期治療の部分では、うつ病の治療が正しく出来る医療に変えること。最初はうつ的症状であったのが医療機関に通い、うつ病・大うつ病・はては統合失調症とかに変化して、悪化の一途を辿るケースが多く聞かれる現在の治療体制の改革をすること】
【治してくれる精神科医につなぐこと。】
(患者との相性の良い医師につなぐ)
精神科医療機関に通院もしくは入院して、自死した人の数が自死者全体の6割・7割(全国自死遺族連絡会・2010)ということを鑑みると、安易につなぐことは防止にならない。
◇10年間でうつ病患者が2・5倍(伝染病ではないはず)精神薬の売り上げが10倍ということを無視しないで、うつ病治療の見直しが急務である。
◇スクールカウンセラーではなく、スクールソーシャルワーカーの配置を望む不登校やいじめ等児童生徒の問題解決は「こころ」だけではなく、総合的な支援が必要である。
◇10年間でうつ病患者が2・5倍(伝染病ではないはず)精神薬の売り上げが10倍ということを無視しないで、うつ病治療の見直しが急務である。
唯一反映されているとしたら、「自殺を図った人が精神科医等の専門家を受診している例は少ない」という文言が削除されたことくらいでしょうか。
さらに腹立たしいのは、パブリックコメントを受けて素案をマイナーチェンジした箇所です。
5.適切な精神医療を受けられるようにする(1)の箇所
素案:
また、過量服薬対策を徹底するとともに、環境調整についての知識の普及を図る。
↓
変更後:
また、適切な薬物療法の普及や過量服薬対策を徹底するとともに、環境調整についての知識の普及を図る。
おそらく、不適切な投薬を規制しろという多数の声を受けての文言の変更だと推測します。しかし、「不適切な投薬の規制」と「適切な薬物療法の普及」とは似ているようで全く意味が異なります。なぜならば、そもそも「適切な薬物療法」など存在しないからです。もしもあれだけ多くの声がこの言葉に集約されてしまったとしたら、担当者への怒り心頭です。
いやいや、もっと怒るべき対象がいます。厚生労働省精神・障害保健課の技官(精神科医)です。彼は、精神科の治療と自殺の関係について実態を調査して欲しいという遺族の声を完全に無視しました。無視どころか、調査はしないと明言し、さらに「必要がないから」とまで言い放ちました。そして、その発言は彼個人のものではなく、厚生労働省を代表する声だということも確認しました。
おわかりでしょうか。自殺総合対策大綱は、精神科受診促進という基本方針を全く改めず、むしろ強化しているのですが、その方針が正しいかどうかについて、評価検討すらしていないということです。被害がここまで明白であるのに、調査をしないと断言する厚生労働省、そしてその言葉を反映した自殺総合対策大綱見直し・・・
もう国は「不作為」のレベルではすまなくなっているのです。
我々がやるべきことは、ひたすら事実を心ある関係者に知らせていくことです。ちょうど、29日水曜日には雑誌「SAPIO」が発売され、大反響シリーズの「うつで病院に行くと殺される」最新記事が世に発表されます。今回も、従来の報道では決して取り扱われなかったタブーをしっかりと取り上げています。是非皆様もご覧になって下さい。そして、その事実を周囲の人々(特に自分の住む選挙区選出の国会議員)に知らせて下さい。