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Channel: 精神科医の犯罪を問う
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精神保健福祉法改正を巡る諸事情と本質的問題

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今回の法改正にあたり、色々なものが見えてきます。精神医療を巡り、関係者・関連団体の意図が透けてきます。

今回の法改正については、様々な問題が指摘されています。表向きの争点は、障害者の権利擁護となっています。しかし、よく見るとそれは実質的な争点ではないことに気付きます。当事者を置き去りしたまま、関係団体が利権の確保と責任の押し付けを巡り、争いを展開しているだけなのです。その対立構図に隠れ、精神医療を支配の道具として利用しやすくさせることを意図している人もいるでしょう。
 
以前、「隔離収容VS地域精神保健という目くらましの対立構図」というタイトルで記事を書きましたが、改めて読むとその構図が理解できるかもしれません。
http://blogs.yahoo.co.jp/kebichan55/52925117.html
 
地域精神保健推進派は、厚生労働省の検討チームに入り込み、家族同意なしの強制入院という案を出しました。この危険度は、想像を絶するものです。家族の同意要件が外れた場合、家族の反対という防御手段がなくなります。たった1名の精神保健指定医の判断で全てが決まります。アウトリーチ体制が整備されるにつれ、その危険度は加速度的に増大します。回避・防御不能の必殺コンボを容赦なく叩きこまれることになるのです。
 
厚生労働省は、この検討チームの案を受け入れず、家族の同意を残しました(ただし、家族等のいずれかの同意)。その理由として、インフォームドコンセントのため、患者さんの人権を守れないから、などと説明していました。一見するとまともですが、どうやら本当の理由はそこではなさそうです。
 
精神保健指定医1名の独断で強制入院をさせた場合、必ず裁判沙汰に発展することを業界の人間は十分に理解しているのです。あちこちで頻繁に訴訟が起こると、病院側にとっても都合の悪いことなのです。うまく責任を回避するには、「家族が同意した」という形を残す必要があります。家族の同意要件を残すことは、精神科病院側にとっては責任をなすりつけることができる上、治療費の取りはぐれリスクまで回避できる、非常に都合の良い条件だったのです。
 
厚生労働省側は「インフォームドコンセント」「人権」と美辞麗句を並び立てていますが、業界の圧力に屈したというのが本音でしょう。本当にインフォームドコンセントと人権の重要性を理解していたら、このような法改正になるはずがないからです。
 
利権を巡る争いにも、責任の押し付け合戦にも興味はありません。本質的な問題から目を逸らすだけだからです。本質的な問題とは、精神科医に過大な権限を付与し、しかもその暴走を止める手段がないという状況です。精神保健指定医は、その判定によって人の自由と権利を奪う権限・権力を持っています。そして、苦痛と屈辱を伴う、虐待や拷問に相当する治療を強制する権限・権力も持っています。その判定には客観性が担保されているのでしょうか?その治療には科学的根拠があるのでしょうか?そして、精神科医による権力が暴走した場合、それを制御できるシステムが存在するのでしょうか?ここに直面しない限り、何も変わりません。
 
権利擁護に関する議論も、実は本質から目を逸らすものです。いくら防御力を高めようが、権利侵害者の存在を放置しては本質的な解決策になりません。それどころか、高めた防御力以上に、権利侵害者の攻撃力を高めようとしているのが今回の法改正です。
 
現在の力関係を(根拠なく)数値化すると、以下のようになります。
精神科医の攻撃力:100~1000
家族(精神科医側についた場合)の攻撃力:1~100
患者の防御力:0~3
家族(患者側についた場合)の防御力:1~100
※精神科医が本気を出せば誰もかなわない
※家族が本気を出せばかろうじて医療保護入院が防げる場合もある

↓法改正後はこうなります

精神科医の攻撃力:100~10000
家族(精神科医側についた場合)の攻撃力:10~1000
患者の防御力:0~3.01
家族(患者側についた場合)の防御力:0~101
※精神科医の最大攻撃力は10倍
※家庭裁判所というリミッターが外れるので、家族(精神科医側)の攻撃力は10倍
※家族の誰かが退院請求できるようになったが、全く機能しない精神医療審査会を通すので、家族(患者側)の最大防御力は+1ポイント程度
※精神医療審査会を表面だけ改善させるので、患者の最大防御力は+0.01ポイント
※早期退院計画作成の義務化自体は、患者の防御力を上げるものではない
※家族間で意見が割れた場合、家族(患者側)の防御力は0になる
 
あくまで数値は感覚で全く何の根拠もありませんが、患者の権利擁護強化というのは単なるPRに過ぎず、その微々たる強化では、入院要件緩和によって起こり得る人権侵害の危険性に全く対抗できないことを言いたいのです。
 
権利擁護は非常に重要です。しかし、真の権利侵害者にメスを入れない限り、「人権!」「人権!!!」という叫びは空虚なものになりかねません。精神科医による権力の暴走は既に(はるかに昔から)起きています。国の解釈では、誤った強制入院など存在しないことになっています。制御システムが全く機能していないために、既に重大事故が発生していることにも気付かず、「異常な~し」と報告し続ける作業員のようです。自分の目を使ったらすぐに異常に気付くはずです。
 
このままでは、11日、12日と形式的に衆議院厚生労働委員会で質疑がなされ、そのまま12日に委員会採決となるでしょう。この日に採決をするかどうかは、早期決着を望む与党に対して、民主党がどのように対応するかにかかっています。
 
恐らくこの議員が採決日を握るキーマンでしょう。採決をさせないよう、強く要望しましょう。国民が拙速な法改正を望んでいないことを知らせましょう。

山井和則(民主党) FAX: 03-3508-8882

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